2009年11月4日水曜日

ソフトバンク(9984)の携帯電話事業について

ソフトバンクについては、CDSスプレッドも4%を上回る水準で推移するなど、かなり不安視する意見が付きまとう銘柄という印象がありましたので、今回改めてどの様な状況なのかを確認しました。

まず、携帯電話事業の収入構成ですが、基本的には基本料、通信料(通話料、パケット料)、機器販売収入の3つに分類出来ます。この会社のビジネスに特徴的である事は、基本料が安い事、通信料単価が高めである事、そして機器販売収入が成長を続けていることです。また料金制度にも工夫があり、機器購入代金を分割払いさせると共に(一括払いも出来ますが大半の人が分割を選択)、分割支払額を通話料金に応じて最大2千円まで割り引く事で、費用負担を全体的に低減する様にしています。

こうした営業施策は、以下の点を考えると非常に理に適った内容であると思います。
1.常に魅力的な携帯端末を投入することで、利用者を継続的に獲得可能
2.端末メーカーは、海外向け及びドコモ向け端末を作る「ついでに」、ソフトバンク向け端末も作れるため、日本市場に新規参入する海外メーカーも含め、継続的に新型機を作る動機がある。特に国内メーカーの過当競争状態を考慮すると、メーカーとしては「作らない」積極的な動機は低い
3.利用者は、低廉な固定料金に惹かれる層、及び利用度合いの低い層が中心であり、ソフトバンクの回線品質の他キャリアに比して劣る点を許容しうる
4.固定料金が安い一方、上記の端末費用割引のため、利用者には2千円程度の通話料は発生させる「動機」があるため、固定料金と合わせて4千円程度は利用料金として負担する事が、期待出来る。(さらに高額な新型端末を購入すると、より高い顧客当り収入が発生する)
5.ソフトバンクは巨額の負債を抱えるが、非常に有利な条件で借入調達を行っている為、上記1から4をしっかり維持していれば、財務的に深刻な問題は(借り換えを除き)発生しない

よって、リスク要因として考えなくてはならない点は、以下に整理出来ると思われます。
a.借入金の借り換え・返済をどの様に実現するか?
まず、この携帯電話キャリアという事業は、EBITDAマージンが25%前後と非常に利幅の大きな事業である点が重要です。さらに上記の通りこれまで彼らの思惑通りに、順調に新規顧客を獲得してきていること、また返済スケジュールに対して手元流動性などが非常に高い事から、当面順調に負債を減らしてゆく事は可能だと考えられます。さらに、先日の様に個人向け社債発行などを行えば、CDSマーケットの状況を知らない、利回り重視の個人資金を取り込むことが可能と考えられる事も、楽観視しうる理由です。

b.回線品質の向上、または次世代回線網に向けた投資をどう実現するか?
ソフトバンクから他社に乗り換えた人のクレームとしてよく聞かれる内容が、回線品質の問題です。会社も当然認識はしているでしょうが、財務的に上記aの点に負担を掛けない範囲で、設備投資を行ってゆく、というのが考え方でしょう。よって長い目でみれば、将来の事業成長性に大いに課題を抱えていると考えられますが、抱える顧客層がそこまでの高速通信を望む層であるか?またそれほど早期に次世代への乗り換えが進むのか?という面において、ある程度次世代投資を遅らせる、または技術的な代替手段の出現に期待する、などという考え方もとり得るのだと思います。

c.割安感の無い株価をどう考えるか?
競合他社株式がPER9倍から11倍である一方、ソフトバンクは53倍!と圧倒的に割高の評価になっています。これだけを見ると、割高なソフトバンク株を売って、割安なKDDI株を買う、というトレードが出来そうなものですが、実際にはなかなか手がけにくいと思います。既にこの株価が支持されているということは、株価バリュエーションを重視する投資家ではなく、新規回線増加数などモメンタムを重視した投資家が、この株価を支えていると思われます。現に3キャリアの中で最も顧客増加のペースが速い当社株式を空売りすることは、バリュエーション上は正しくてもなかなか追随するその他の投資家がいないのではないでしょうか。上記aの懸念が高まれば、新規株式発行などのリスクが露見しますので、株価も落ちるでしょうがその可能性は従来からあり、むしろ時間が経つにつれ可能性が薄らいだのが現実ではないでしょうか。

という事で、上記の様な見方をしていると、積極的にソフトバンクに投資する理由は無くとも、何か急変を危惧する状況でも無いという印象です。むしろ競合のKDDIの方が将来性を考える上で難しい点があると思いますので、ファンダメンタルズ重視の向きの注目を集めるのではないかと考えています。

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