2009年10月23日金曜日

日本航空(9205) その1

今話題の日本航空の再生劇について、色々な観点から少しづつコメントしたいと思います。

メディア報道によれば、おおよそどの様な形でのバランスシートリストラクチャリングを行うかが固まってきたようです。
a.取引銀行による2200億円の債務免除と300億円のDES(債務の株式化)
b.1800億円程度の取引銀行による、国の信用保証付き「つなぎ融資」の提供
c.3000億円程度の国による出資
上記は2010年3月期末の当期損失が5000億円程度になる事を想定しての事と思われます。内訳は営業損失で2000億円、リストラ費用及び資産償却を併せて上記数値となる様です。これらの数値について、開示資料+いくつかの推定ベースで考えてみたいと思います。

まず、営業損失の2000億円ですが、有効座席利用率(販売出来た座席の割合)が55%程度を想定していると思われます。09年3月末実績で国際・国内線合わせて64%程度の利用率でしたが、最近の四半期毎の実績を見ますと前年より6%程度落ちて見えること、旅客手荷物収入を有償旅客キロで割った数値を見ますと、対前年比で34%ほど落ちていますので、長い目では業績回復を期待しつつも短期的には、覚悟をせざるを得ない数値のようです。

リストラ費用ですが、9千人の方に退職していただく上で、退職割増金をいくら出すか?という想定しだいですが、高給取りの方も多いと思いますので、ざっと1千万円程度は見て900億円。残り2000億円は資産処分損ということになりそうです。大きな資産としては、やはり飛行機だとおもうのですが、簿価25億円未満の保有機66機(保有機の約40%)を単純に0査定しても、635億円の損失にしかなりませんので、残りは不動産及び子会社の処分損でしょう。保有不動産では売却対象となりそうなのは、本社ビルが土地・建物で1100億円程の簿価、また子会社であるJALホテルズ等の売却がその出所となりますが、開示情報で見た限りでは2000億円の損失は考えにくいと思います。航空機処分損と併せてせいぜい1000億円弱、当期損失は4000億円未満では無いでしょうか。ただし、現在年金の一時払いによる債務圧縮も検討されているようですから、これに伴う未認識債務の認識に伴う損失が上乗せされるのかもしれません。

こうして5000億円もの当期損失が発生すると、単純に前期末の株主資本から差し引いて3253億円の債務超過となります。これを債務免除益と増資で埋め合わせるために、5500億円(=2200+300+3000)が必要ということの様です。2500億円(=2200+300)の負債が削減され、10年3月末期限の社債が償還されるとすると、有利子負債残高は5030億円となり、Debt/Equityレシオは2倍強。ネット有利子負債は10年3月期のキャッシュフローを考慮しなければ、300億円(=5030-1730-3000)と、かなり健全なバランスシートになる様です。

もっとも、そもそも主に銀行を中心とした債権者が上記の要請を受け入れるか、まだ未確定ですし、借入金の減免を協議しておきながら、既存の社債及び株式についての取り扱いがどうなるのかも聞こえてきません。(「べき論」としては、社債・株式とも一部返済免除や無償減資などが求められるのだと思いますが、どうなるのでしょうね)資産売却を想定すれば、返済原資がそれなりにある事を考えると、国土交通省側としては話をこじらせないためにも、社債権者との交渉は避けたいのかもしれませんが、社債より上位の債権者に債務免除を求めている点と、どう整合させるか?

株式資本については、投資リターンに厳しくない国が出資者という前提であれば、このままの条件で出資に応じる可能性もありでしょう。一株100円で50%強の議決権を持つことになるのでしょうから、無理に既存株主の議決権を押し下げるために、無償減資させる必要は無いでしょうから。

日航、赤字5000億円…2010年3月期
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091022-00000110-yom-bus_all

日航「つなぎ融資」に政府保証=私的整理「ADR」申請へ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091023-00000005-jij-bus_all

日航支援 資本増強3000億円 専門家チーム、大半が公的資金
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091022-00000047-san-bus_all

0 件のコメント:

コメントを投稿